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日本のサソリ研究のきっかけになったサソリ

キョクトウサソリ Mesobuthus martensii (Karsch, 1879)


By Já [Public domain]

英名:Manchurian scorpion
科名:キョクトウサソリ科 (Buthidae)
分布:中国 (北東部、中部、海南島)、モンゴル、北朝鮮 (黄海道沙里院市ジョンバンサン)、シンガポール*1*2*3
体長:50~60mm*1


(キョクトウサソリの分布、シンガポールを除く)

「キョクトウサソリ科」という名称は非常に有名ですが、この科名になっている「キョクトウサソリ」についてはほとんど知られていないと思います。

岩川 (1906) により、日本で初めて和名が記載されたサソリのうちの一種です。もともとは、假名 (=仮名) としていますが、「ツクシサソリ」という和名で記載されました*4
岩川 (1906) によると、日露戦争中、満州において日本軍の兵士たちを怖がらせたのが現地に生息していたキョクトウサソリだそうです*4

分布地の大部分は中国ですが、北朝鮮にも生息しています。主に、温暖な地域の植物が密集していない場所に生息しています。また、現在では人家の周辺にも生息しており、家の壁の隙間や、庭に穴を掘って隠れていることもあるそうです。

海南島に生息するものは「Mesobuthus martensii hainanensis」という亜種 (同種ではあるが遺伝的に離れている) とされます。

日本国内では、1955年に兵庫県の須磨浦海岸で2個体の発見例がありますが*5、それ以外に発見例が無いため、日本国内には定着していないと思われます。しかし、この発見例から、海外の文献では、外来種として日本国内に生息していると書かれることがあります*1*2

出典

*1 Q, JX., MS. Zhu and WR. Lourenco (2004) Redescription of Mesobuthus martensii martensii (Karsch, 1879) (Scorpiones: Buthidae) from China, Revista Iberica de Aracnologia, 10:137-144.
Sociedad Entomológica Aragonesaウェブサイトより閲覧可

*2 Fet, V., WD. Sissom, G. Lowe, and ME. Braunwalder (2000) Catalog of the scorpions of the world (1758-1998), The New York Entomological Society, New York.
Marshall Digital Scholar より閲覧可

*3 Shi, CM., ZS. Huang, L. Wang, LJ. He, YP. Hua, L. Leng and DX. Zhang (2007) Geographical distribution of two species of Mesobuthus (Scorpiones, Buthidae) in China: insights from systematic field surveys and predictive models, The Journal of Arachnology, 35(2):215-226.
American Arachnological Societyウェブサイトより閲覧可

*4 岩川友太郎 (1906) 本邦産の蝎類, 動物学雑誌, 18(207):5-12.
国立国会図書館デジタルコレクションより閲覧可

*5 一色於菟四郎・米沢昌 (1960) 日本で採れたキョクトウサソリ (Buthus martensii Karsch), 衛生動物, 11(3):117-123.
J-STAGEウェブサイトより閲覧可

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