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サソリのオスとメス
(サソリの婚姻ダンス。左がオス、右がメス。)
サソリのオス・メスを見分けるのは難しいです。というのも、オス・メスどちらかにしかない外部構造というものが無いからです。特に、若虫では雌雄を判別することは不可能な場合が多いようです。
しかし、亜成体や成体のサソリ(最後の脱皮をする前が亜成体、脱皮後が成体)では、オスとメスで形態的な「差」が現れると言われており、多くの同種個体を観察する、もしくは、オスとメスを見比べることで、雌雄の区別がつくようになるそうです。
雌雄での体型の違い
上の図は、成体サソリの婚姻ダンス (promenade à deux: プロムナード・ア・ドゥ、2人の散歩) と呼ばれる行動を表したものです。図では、サソリのオス (左) とメス (右) の大まかな形態的差異を示しています。大きなポイントは3つです*1。
・メスのほうが大型でふっくらとした形態をしている (Pandinus属, Heterometrus属など)
・オスのほうが終体が長く、体長が長い (Hadogenes属, Centruroides属など)
・オスのほうが触肢のはさみが大きい、または長い (Pandinus属, Heterometrus属, Centruroides属, Opistophthalmus属など)
櫛状板 (くしじょうばん) pectin
つづいて、多くの種で、雌雄を見分けるポイントとしてよく知られているのは、腹側にある櫛状板です。サソリの成体では、下の写真のように、オスのほうが櫛状板が大きく (長く) 発達し、歯の数が多くなると言われています。ただし、オスとメスで櫛状板の歯の数がオーバーラップする場合もあります。
櫛状板は地面の振動を感知する器官と言われていますが、それとは別に、婚姻ダンスのときに、オスは精包(精子の入った構造)をはき出す場所を探すために櫛状板を盛んに動かします。このような用途 (機能) の違いが大きさの違いに影響しているのかもしれません。
生殖口蓋 (せいしょくこうがい) genital operculum
もうひとつ、櫛状板の前にある生殖口蓋の形状がオスとメスで異なるそうです。生殖口蓋は精巣・卵巣の出口である生殖口をふさいでいる蓋 (ふた) です。生殖口蓋が楕円形・四角・ハート型などオスとメスで形に違いがあったり、中央の縦線 (溝) の明瞭さが異なるなど、種によって雌雄で違いがあるそうです。さらに、多くの種で共通する特徴として、成熟したオスでは、生殖口蓋の後端部分に小さな突起「genital papillae」ができるそうです*1。
→Urodacus yaschenkoiのgenital papillae (外部サイト)