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サソリの蛍光現象② 蛍光の機能的役割

アリゾナバークスコーピオンの蛍光反応
(アリゾナバークスコーピオンの蛍光反応)

蛍光現象は、サソリにとってどのような意味をもっているのでしょうか。
蛍光現象はサソリ以外の動物でもみられ、交配・繁殖のためなど、機能的な意味をもっている場合もあるようです。

サソリの蛍光現象の機能的役割については、これまでにいくつもの説が提唱されています。
 ・紫外線の感知*1
 ・月光の感知*2
 ・異性や種を区別するため
 ・天敵やライバルを寄せつけないため
 ・異性を惹きつけるため
 ・獲物を引き寄せる・捕獲のため

サソリの蛍光現象の仮説
(サソリの蛍光現象の仮説)

これまでに、サソリの視覚は約500nmの緑色の光に対して感受性があることがわかっており*3、サソリどうしで蛍光によってコミュニケーションをとっている可能性は十分にあります。
また、サソリの外骨格 (外皮) は紫外線を感知できるとも考えられているため*1*2、蛍光反応は紫外線に対する反応に関係している可能性もあります。

反対に、サソリの蛍光には特に機能的な意味が無いという説もあります。
植物ではクマリンが紫外線を防ぐ役割をしている場合があるそうで、サソリにおいてもかつてはヒメクロモンが日よけの役割を担っていたのが、現在では夜行性の種が多くなったにもかかわらず、日よけのメカニズムの名残としてヒメクロモンを合成しているだけかもしれません*4
また、1齢若虫や脱皮直後のサソリでは蛍光反応を示さないため、蛍光物質は、外骨格が硬化するための反応のなかで副産物として合成されているだけなのかもしれません*5

いずれにしても、蛍光反応についてはいまだに決定的な説が無く、蛍光現象の意味が明らかにされるのはまだまだ先かもしれません。

出典

*1 Blass, GRC. and DD. Gaffin (2008) Light wavelength biases of scorpions, Animal Behaviour, 76:365-373.

*2 Kloock, CT., A. Kubli and R. Reynolds (2010) Ultraviolet light detection: a function of scorpion fluorescence, Journal of Arachnology, 38:441-445.
American Arachnological Societyウェブサイトより閲覧可

*3 Machan, L. (1968) Spectral sensitivity of scorpion eyes and the possible role of shielding pigment effect, The Journal of Experimental Biology, 49:95-105.
Journal of Experimental Biologyウェブサイトより閲覧可

*4 Frost, LM., DR. Butler, B. O'Dell and V. Fet (2001) A coumarin as a fluorescent compound in scorpion cuticle. In Fet, V. and P.A. Selden (eds.), Scorpions 2001: In Memoriam, Gary A. Polis, British Arachnological Society, Buckinghamshire, pp.365-368.

*5 Stachel, SJ., SA. Stockwell, and DL. Van Vranken (1999) The fluorescence of scorpions and cataractogenesis, Chemistry and Biology, 6:531-539.
Cell Pressウェブサイトより閲覧可

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