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サソリの蛍光現象③ 蛍光しないサソリ

紫外線による蛍光は全てのサソリで共通する現象だと考えられてきました。
しかし、当然ですが、これまでに記載された全ての種で蛍光が調べられたわけではありません。

近年、紫外線に対して蛍光反応を示さないサソリが報告されました*1
アゴハリサソリ科 (Chaerilidae) は、インドから東南アジアにかけて生息しており、Chaerilus属約40種だけからなる小さなグループですが、このアゴハリサソリ科のサソリでは紫外線に対して蛍光反応を示さないそうです。
(Lourenco (2012) の写真:リンク先ページ左部)

アゴハリサソリ科は、洞窟性のサソリや雨林にすむサソリ、山岳地域の森林に生息するサソリなど、種によって生息環境が様々ですが、これらのサソリ9種で蛍光反応を調べた結果、眼の有無や生息環境の違いに関係なく、9種全てで蛍光が見られなかったそうです*1
眼を失ったサソリや洞窟性のサソリなど、サソリどうしで蛍光反応を見分けられない状況であれば、蛍光する必要がないため、蛍光しなことが環境への適応と考えられます。しかし、アゴハリサソリ科のサソリが蛍光しないことは紫外線が入らない環境への適応などではなく、アゴハリサソリ科が系統的に蛍光反応を失った (もしくは蛍光しないことを獲得した) と考えられます。

アゴハリサソリ科で蛍光反応を示さない理由はわかっていませんが、少なくともアゴハリサソリ科のサソリは蛍光反応を示さなくても生きていけるわけで、もしかすると、蛍光現象は特に機能的な意味をもっていないのかもしれません。

出典

*1 Lourenco, WR. (2012) Fluorescence in scorpions under UV light; can chaerilids be a possible exception?, Comptes Rendus Biologies, 335:731-734.

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